遂にGoProに有力な挑戦者が現る。
アクションカメラと言えば、ここ数年GoProの独り勝ち状態が続いていましたが、中国のシリコンバレーと呼ばれる深圳発のInsta360シリーズが、その牙城を崩すべく奮闘しています。既にInsta360 one Xなどで360度カメラで世界シェアNo.1を獲得していますが、遂にInsta360 one Rで、アクションカメラ市場に本格的に進出しようとしています。その戦略は、Insta360得意のハイブリッド戦略、つまり、「アクションカメラだけでなくて360度カメラとしても楽しめるよ?こっちの方がお得でしょ?」という戦略です。
(Insta360の戦略についての考察はこちらもご参照ください。)
そしてGoProもまだまだベンチャー企業精神があって対応が早いので、360度カメラとしても使える対抗製品、GoPro Max を出してきています。
今回は、Insta360 one R と、GoPro Max を比較していきます。
詳しくは先を読み進めていただきたいですが、時間のない方の為に私の出した結論だけ先に書いておきます。
結論:
スペックとしては大差ないが、「切り替えの操作性」と「データ形式」でGoProに優位性あり。
但し、
360度カメラと180度カメラをハイブリッドで使用するために、Insta360 one Rは作業性を犠牲にしていて、GoPro Maxは画質を犠牲にしている。
なので結局、
360度カメラ重視ならInsta360 one X (Evo),
180度アクションカメラ重視ならGoPro Hero8.
が現時点では良い。
ハイブリッドの発想はとても面白いし興味深いのですが、アクションカメラと360度カメラのハイブリッドは、まだ時期尚早という個人的結論に至りました。では詳しく見ていきましょう。
比較
まずは表にスペック比較表をまとめてみました。ちなみに金額はほぼ同等です。
Insta 360 one R | GoPro Max | |
センサ | 1 / 2.3 | ? |
静止画 | 360度:1850万画素 180度:1200万画素 |
360度:1660万画素 180度:550万画素 |
動画 | 360度:5.7K / 30fps 180度:4K /60fps |
360度:5.6K / 30fps 180度:1.4K /60fps |
バッテリー | 1190mAh(動画撮影約1h) | 1600mAh |
マイク | 6ch | 2ch |
防水 | 5m | 5m |
手振れ補正 | Flow State 6軸 | MAX HyperSmooth (6軸) |
見ての通りですが、スペックだけに着目すると、
180度カメラ使いの品質はInsta360の圧勝、マイクとバッテリーはGoProの圧勝、その他はほぼ同等
となります。ちなみに180度カメラの品質について大差がついているのは、Insta360はモジュール化をしている、つまり組み替えて使うことを想定していて、GoPro Maxは切り替えを行わずに一つのハードで両用使いをしているからです。つまり設計思想の違いによるものです。話を戻してスペックだけに着目し比較を素直に捉えると、
360度カメラメインで考えるならGoPro Max、180度カメラメインで考えるならInsta360 one R
という少し意外な結果となります。ただそもそも、この考え方はナンセンスですね。そもそも、どちらかの使用をメインで考えているなら、
360度カメラメインで考えるならInsta360 one X、180度カメラメインで考えるならGoPro Hero8
で良いのです。GoPro MaxもInsta360 one Rも、360度と180度の両方を使うとしたら初めて価値が出てくる商品になります。餅は餅屋の発想を超えるハイブリッドの価値が示せるかどうかなのです。
そういう視点で捉えると、Insta360 one Rのモジュール切替方式は致命的な欠点を有すると私は考えています。慣れれば5秒~10秒で切り替えられるとは言っても、その作業を外で撮影中に行うことはかなりの手間です。手が汚れていたら綺麗にしてから作業したいでしょうし、そもそも二つのレンズを鞄に入れておくことが億劫だと思ってしまいます。ここは人によるところで、例えば1日単位で切り替えて使いたいという人には丁度良いかもしれません。ちなみにGoPro Maxはボタン一つで切り替えが可能です。冒頭に述べたように、360度用のレンズとセンサを使いまわしているからです。つまり、
360度カメラと180度カメラをハイブリッドで使用するために、Insta360 one Rは作業性を犠牲にしていて、GoPro Maxは画質を犠牲にしている。
ということになります。つまり、どちらを選べと言われたら、
ハイブリッドで使用するときの作業性を考えるとGoPro Maxの方が良い、切り替えの面倒さが気にならない場合はInsta360 one R が良い
となりますが、そもそも360度カメラと180度カメラのハイブリッドは、デメリットも大きいので、
「それぞれ準備した方が良いんじゃない?」
というのが結論になります。
勿論、ハイブリッドにすることで支出は抑えることができます。ですが今回の両製品に対しては、金額のメリットを上回るデメリットが残っちゃっているのかなという印象です。「餅は餅屋」を覆すのはなかなか難しいのですね。
ハイブリッドにすべき組み合わせ、そうでもない組み合わせというのが存在していて、その見極めが、ビジネスモデル構築においてはとても重要だということがよくわかります。
ちなみに
Insta360 one XとInsta360 one EVOを比較してみた。
の記事で紹介しているように、360度カメラと3Dカメラについては、ハイブリッドにするメリットがとても強い組み合わせだと思っています。
そして、ハイブリッド以前の話で、Insta360 one Rをアクションカメラとしてとらえると、もう一つ致命的な欠点があります。それは、
動画のファイル形式が、Insta360特有の形式(拡張子)であり、mp4ファイルに変換するのに莫大な時間がかかる。
これは本当に致命的です。
ノートPCやiPad、Surfaceあたりで編集しようとするととても時間がかかります。Surfaceを使用している私の場合、1分程度の動画でも数時間かかっています。
静止画や短い動画だけなら我慢できますが、アクションカメラとして少し長めの動画を撮ろうとすると、致命的となります。
勿論、Insta360の提供するアプリを使えば変換せずに見ることはできますが、YouTube等にアップしようとすると変換が必須です。また、ほとんどのVRゴーグルでも、mp4ファイルなどに変換が必要です。今のところ、Oculus goやgear VRではInsta360アプリがそのまま使えるようですが、少し物足りないですね。つまり、
Insta360 をアクションカメラとして使うのは、mp4ファイル出力が可能になるか、専用拡張子が相応にメジャーになるまでは待った方が良いかもしれない。
と私は考えています。せめて、市場を設計しそうなOculus Quest やOculus Quest2では使えるようにしてほしいところです。このあたり、Insta360 とoculus questシリーズのコラボが待ち遠しいですね~。