「何とも言えない切ない気持ちになる」 母性(湊かなえ)の感想

お薦め度

★★★★★

感想

「これが書けたら、作家を辞めてもいい。そんな思いを込めて書き上げました。」そんな湊かなえさんのコメント通り、作者の気迫や強い気持ちが存分に伝わってくる、非常に読み応えのある一冊だった。先が気になって、ドキドキしながら深夜に一気に読み切ってしまう一冊。

結婚、台風、家事、事故、祖母の死、嫁姑問題、義姉妹家族の非常識と不親切、虐待、流産、詐欺、不倫、駆け落ち、自殺未遂、殺人未遂?・・・・といった重たい事件と共に、母、娘の気持ちがそれぞれの手記のような形(実際はちょっと違うけど)語られる。

母子それぞれ捉え方が微妙に異なるそれぞれの事件を通じて、母子間の歪な愛情、父母子の心のすれ違いや勘違い、愛情不足、負の感情、主人公にとっての母性とは、、などが明らかになっていく。

その過程で幸・不幸が繰り返され、ドキドキしながら読み進めることになるのだが、最後は少し幸せっぽく見えなくもないが実は心の内面では綺麗に和解は出来てなくて、モヤモヤが残っっているが表面上は幸せに見える家族、みたいなところに落ち着く。ハッピーエンドでもなくバッドエンドでもなくどっちつかずな所がまた、考える余韻を残してくれる。

何を考えさせられるかというと、やはり家族・夫婦・親子の関係について。

母親や父親の愛情を存分に受けきれずに生きる子供が抱える悩みは途轍もなく大きいし、父親や姑家族の協力を得られない母親の悩みも途轍もなく大きい。娘は母親に愛されたいと願ってそのように行動するが、母親の愛情が歪んでいるとそれに気付けない、または誤解して受け取ってしまう。その逆も然り。そんな関係はお互いの心をとても深く傷つける。

美しい家族、温かい家族を築いていくことは、とても壮大なドラマであり、大変なことだけど、とてもやりがいのあることであり、私の生きる意味である。そのためには、妻にも息子にも娘にも親にも最大限の愛情をもって接することが大前提で必要であり、親戚や友人、息子や娘の友達やその家族、先生などにも愛情をもって愛情と自覚をもって接する、温かく強く生きることが何よりも大事である。

そんな、わかっているようで全てを行動に移すのはなかなか難しい基本的なことを、再確認させてくれる、奥の深い物語だった。妻にも読んでもらって、家族の目指す美しい家族、温かい家族の姿について語り合いたい一冊だった。

ゴリラ
ゴリラ
家族って奥が深いなぁ。

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投稿者: コロッケ太郎

妻と息子と3人暮らし。週末に家族で遊びに出かけることと子供の昼寝に付き添って小説を読むことと美味しいコロッケを探求することがささやかな楽しみ。