お薦め度
★★★★★
どんな人にお薦め?
あらすじと感想
極端な肥満体系にも関わらず運動神経抜群で友達も多く優しく活発に生きていた人気者の有羽。そんな有羽が高校生の時にまさかの自殺。有羽の自殺を巡る真実が、絶世の美人(元ミス・ワールドビューティ)で現在は美容外科医である橘久乃と様々な関係者との会話から明らかになっていく。そして真実の背景には、身体的コンプレックスや家族問題やいじめ問題が複雑に絡み合っている。
有羽の成長に欠かせないアイテムとなった手作りドーナツを中心とした温かいエピソードとともに、それを上回る不幸のエピソードが交互に語られ、そして少しづつ不幸が上回っていくというなんともイヤミスらしい話が展開される。
以下はネタバレを含みますので未読の方はご注意ください
有羽の自殺の背景には、湊かなえさんの作品らしく、コンプレックスや不幸やボタンのかけ間違いの連鎖がある。よくもまぁこんなにも伏線だらけの物語を書けるものだと感心する一方で、自殺のような悲劇が生じる際には、これに近い連鎖が実際にも起きているような気もする。
とにかく、伏線だらけの複雑に絡み合った相関図を描いてみた。小説を読み終えた人にとって振り返りのお供になれたら嬉しいし、読んでない人は相関図を元にそれぞれの物語を考えてみるのもきっと楽しいはずである。中心人物の橘久乃さんとの関係線が複雑すぎるため、物語の重要アイテムとなるドーナツになぞらえた「ドーナツ相関図」としている。
「整形」の持つ二面性を上手く使いながら、人間一人一人が持つ二面性が緻密に描かれ、その背景にはそれぞれの人が持つ身体的コンプレックスや家族問題が絡み合っているという物語。(身体的コンプレックスの連鎖が引き起こす悲劇)
家族の不幸や身体コンプレックスに負けずに前向きに生きていたのに、それを上回る不幸に見舞われる肥満の吉良有羽。
中学高校といじめられ、大人になって立ち直りかけたけど結局は子供時代のコンプレックスを最後まで引きずってしまう肥満の横網八重子。
失恋体験で養われた少し偏った正義感を他人に押し付け、無自覚に他人に不幸をまき散らす柴山登紀子。
昔の恋を忘れきれない堀口弦多。
整形を隠して帝王切開を理由に堂々と嘘をつく倖月沙良やあっさり騙されて自身も整形を施す如月アミ。
芯を持たずいつも皮肉な考え方に陥ってしまう結城志保。
不倫旦那への復讐に子供を巻き添えにしてしまう吉良千佳。
誤解が原因で友人を失い、無意識の体型差別で人を傷つけてしまう城山萌。
確信犯的二面性を有する美人すぎる橘久乃。
これらの人物たちの一つ一つの行動や考え方が悪い方向に重なり合い、悲劇が生じる。つまり、現実離れしているようで、割と現実的で身近な話である。
自分の行動も一歩間違えれば、他の誰かの行動と重なってしまえば誰かの不幸を引き起こすことも十分にあり得るよね、人をからかったりいじったりネタにしたりすることはしてはいけないよね、という教訓を得られる。
最後まで話が非常にダイナミックに展開されるので一気に読めてしまうとても面白い物語でありながら、意外と身近な人との会話とか態度が連鎖して誰かが不幸になるという不幸が生じるメカニズムについても再認識できる一冊である。是非多くの人に読んでもらいたい一冊である。
その他のお薦めリンクはこちら★
コロッケ太郎の読書感想リンク集