必読~2030 半導体の地政学(太田泰彦)~

お薦め度

★★★★★

どんな人にお薦め?

    • 世界情勢を俯瞰的に知りたい人

あらすじと感想

日常の努力とは別の、多くの人には見えていない大きな力学によって世界は動いているというある種悲観的な仮説は、半分以上正しいと思っている。そんな力学の範疇で、パイの争奪やら技術的な改善やらを繰り返しているのが私を含む多くの一般人であると思っている。

そんな世界を動かす大きな力学の1つが、半導体である。より上流にはエネルギー資源や鉱山資源がある(必読~新しい世界の資源地図(ダニエル・ヤーギン)の感想~ を参照)が、それと対をなして重要なのが半導体である。

国土の観点からエネルギー資源は如何ともしがたい側面が多いが、半導体分野であればまだ存在感を示せる可能性が残っている。しかし、実際には半導体分野においても、技術力・政治的後押しともに衰退が進み、日本に存在感は日々薄れてきているのが実情である。本書を読むと改めて危機感を覚える。

半導体も、地政学とセットで捉えると全体像を把握しやすい。良くも悪くも台湾が最たる例である。日本としても、国家戦略とセットで考えることが出来れば、まだまだ巻き返す道は多くあるように思う。世界情勢や国家戦略を踏まえた技術開発の戦略立案および人材育成が今後の国力を左右する重要なキーファクターとなるのだろう。国民一人一人がそのような背景を把握して行動に移すことが出来れば、国力は自然と高まっていくのだろう。(教養レベルの向上という課題に対して、何が起きれば革命的なことが起きるだろうか。どうすればそんな社会になれるのだろうか・・と考えても結局は悲観的になってしまう。)

日ごろのニュースに対して、一歩深く踏み込んで捉えることが出来るようになる一冊である。必読書と言えるだろう。蛇足だけど、国民の半分くらいがこのくらいの前提知識を有していたら、、とても住みやすく心地よい社会になるんだろうなぁ。イライラするようなワイドショー番組も減るんだろうなぁ。そんな社会に住んでみたいなぁ。

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